ディアブロの夜

「太助様、はやくぅ」
「シャオ、そんなあわてんなって」
今日は町の図書館に来ている。宿題の読書感想文の題材となる本をさがしにきたのだ。
「シャオさん、私と一緒に本をさがしましょう」
「あっ、てめぇずるいぞ。シャオちゃんはおれとさがすんだ!」
「たー様ぁ。たー様はあたしと一緒にさがすわよね?」
「七梨先輩はあたしと一緒にさがすんです!」
「・・・・僕はルーアン先生と一緒に・・・・」
「まったくこの連中は・・・・」
もちろん、出雲、たかし、ルーアン、花織、乎一郎、翔子も一緒だ。
学生ではない出雲とルーアンが来てるのは疑問だが。
ちなみにキリュウは家にいる。
「と、とにかく中に入ろうか」

さすが町でも有数の大きな図書館だ。かなり広い。
「かなりの本の数だな・・・・。この中からえらぶのか・・・・。」
少しぼうぜんとする太助の横にシャオが歩み寄ってきた。
「あの・・・太助様。よろしかったら私と一緒に本をさがしませんか?」
「え・・・」
太助の顔が赤くなる。
「そうはいかないわよ、シャオリン!たー様はあたしのものよ!陽天心召来!」
と、そこへすかさずルーアンが割り込んできた。
「うわぁぁぁぁ!やめろルーアン!」
しかし時すでにおそし。陽天心をかけられた机やいすが暴れまわっている。
「ルーアンさん!図書館でさわいではいけませんわ!」
シャオも星神で応戦する。
「ああ・・・シャオまで・・・」
その場でへたり込む太助に花織がにじり寄ってきた。
「七梨先輩!あたしと一緒に本をさがしましょう!」
「え、ちょっとちょっと!?」
花織はシャオとルーアンから引き離すように、太助の手を引っ張って図書館の奥へとつれていってしまった。

「ねえねえ七梨先輩、この本はどうかな?」
「ああ・・・」
二人はあまり人のいない奥の方で本選びをしていた。
「結局、愛原と一緒にさがしてる俺って・・・」
太助は少し罪悪感にかられていた。
「まあ一応、本はさがさないとな・・・」
そう思うと、太助は本棚を見ながら歩きはじめた。
「きゃーん。この本もいいなぁ。あっ、でもこっちの本もいいかな。
ねぇ、七梨先輩はどっちがいいと思いますか?・・・・って、あれ?」
いつしか二人は離ればなれになっていた。

「うーん、どの本にしようかな」
太助は一人で本をさがしていた。まわりには人が一人もいない。太助はそのことに気づいていないが。
「ん・・・なんだこれ」
太助はふと目にとまった本を本棚から取り出してみた。
「<伝説の魔道書>?変わったタイトルだな・・・・どれどれ・・・・」
太助はその本を開いてみた。すると中から何やら黒い塊がとびだして、それは太助の方に向かってきた。
「な、なんだ・・・」
やがて視界は闇につつまれ、いつしか太助は意識を失っていた。

「あーっ!七梨先輩こんなとこにいたんですね!急にいなくなったんでびっくりしましたよ」
「あ、ああ・・・悪かったな。俺、本決まったよ。さっそく貸し出しの手続きをしてくるよ」
「どんな本ですか?<伝説の魔道書>・・・?ああ!魔法の本ですね!
七梨先輩もけっこうロマンチックですね」
この時花織は気づかなった。目の前にいるのは太助ではなく太助の姿をした何かだということに・・・。

「お帰り、主殿。どうした、シャオ殿、ルーアン殿。ずいぶんボロボロのようだが」
太助達は家に帰ってきた。シャオとルーアンは図書館で暴れて服が少しボロボロになっていた。
「ごめんなさい。太助様・・・」
「ったく、あの小娘。どさくさにまぎれてたー様といっしょに」
シャオは反省しているがルーアンはあいかわらずだった。
「いいよ、そんな事。それより俺は借りてきた本を読んでみるよ」
太助はそう言うと、急いで自分の部屋へと入っていった。
「太助様・・・やっぱり怒ってる。あんなに急いで・・・」
シャオもまだそれの存在に気づいていなかった。

「ふむふむ・・・なるほど・・・」
太助は部屋で借りてきた本を読んでいた。そして何か考えていた。
(この男の記憶をのぞいてみたが、おどろきだな。三人もの精霊をしたがえているとは・・・)
その時、太助の脳裏にある考えが浮かんだ。
(これは使えるかもしれん・・・)

その日の夕食の時間、突然太助はこんな事を言い出した。
「あのさ、シャオ、ルーアン、キリュウ、実は三人に頼みたいことがあるんだ」
「どうしたんですか、太助様。何か困ったことでも・・・」
「いやーん、たー様ったら、何か頼み事があるんなら、ルーアン一人で十分なのにぃ」
「・・・主殿、私もか?」
「ああ、三人にそれぞれやってほしいことがあるんだ。まずシャオ。
シャオにはあるものをつくってもらいたい」
「あるもの・・・ですか?」
「ああ、作り方は後で紙に書いてわたすから、その通りに作ってくれ。次はルーアン。
陽天心をかけたやつを俺に貸してほしいんだ。何でもいいから手頃な大きさの物。
数は5.6個あればいいから」
「まっかせてちょうだい、た−様!」
「最後にキリュウ。キリュウには場所を用意してほしい。なるべく目立たなくて、しかも広いところ。
邪魔なものは、万象大乱で小さくすれば問題ないだろ」
「ああ、わかった。しかし主殿」
「何?」
「それでいったい何をする気なのだ?」
「えっ・・・と、それは・・・。まあ、いいじゃないか。三人とも俺のためだと思って頼むよ」
太助は「俺のため」というところを強調して言った。
「太助様のために・・・」
「たー様のために・・・」
「主殿のために・・・」
その言葉にしばし三人は酔いしれていた。しかし太助は、
(ふふ・・・うまくいった・・・)
何か不気味な笑みをうかべていた。

「あれぇ、シャオ何してんだ?」
道を歩いていた翔子が見たのは、何やらリュックにいろんなものをつめこんで歩いているシャオの姿だった。
「あっ、翔子さん。実はですね・・・」
シャオは昨日の夜のことをすべて翔子に話した。
「へぇ・・・七梨がそんなことを。じゃ今頃ルーアン先生やキリュウも頼まれたもの用意してるってわけか。
で、シャオは?」
「はい、私はあるものを作ってくれって言われまして、今その材料を集めているんです」
「あるものって?」
「さぁ・・・そういえば聞いてませんでした」
「あのなぁ。まあいいや。で、そのリュックには何が入ってるんだ?」
「そのあるものの材料です。もうだいぶ集まりました」
そう言ってシャオはリュックを開けて中にあるものを見せてくれた。
「げっ!なんだこれは」
翔子がおどろくのも無理はない。中に入っていたのはこうもりの羽やカエルの死骸、何かの目玉など
あまり見ていて気持ちのいいものではなかった。
「これが材料・・・」
「はい。あとは#$%とか&@*¥とか・・・」
「やめてくれ!聞きたくない!」
翔子は叫んだ。
「翔子さん・・・」
「・・・ごめん、シャオ。どなったりして。しかしすごい材料だな。まるで西洋の魔術の実験じゃないか。
ほんとにこれを七梨がたのんだのか」
「はい、わたされた紙にはっきりと書いてました」
「そっか・・・ひきとめて悪かったな。じゃがんばれよ」
「はい」
そういってシャオは再び歩いていった。
(七梨のやつ・・・何考えてんだ・・・)

そしてその日の夕方、三精霊達が太助の家に帰ってきた。
「たー様ぁ。数はこんなもんでいいかしら」
「主殿、山の中にちょうどいい場所をみつけた。あそこなら目立たない」
「ありがとう。シャオは?」
シャオは何やら大きなバケツを差し出した。中にはペンキのようなどろどろした液体が入っている。
「紙に書いてあった通りに作ったらこうなったんだんですが・・・」
「これでいいんだよ。ありがとうシャオ。ところで次の満月っていつだっけ?」
「今晩満月ですけど?」
「何ぃ!?」
太助は一瞬おどろき、次の瞬間には喜びに変わっていた。
「ラッキー!それなら今晩さっそく実行だ!」
「え・・・満月が何か?」
シャオは主の予想外の反応に少しとまどっていた。
「いや、こっちの話だ。それより俺はこれから出かけるよ。今日は帰ってこないから」
「ちょっとたー様!いきなり何言ってるのよ!」
「いけないのか?」
「いや、その・・・あまりにもいきなりだから。あ、そうだ!だったらルーアンも一緒に行くぅ!
二人で熱ーい夜を・・・」
「だめだ、ついて来るな」
ルーアン撃沈。そりゃそんなにはっきり言われちゃ・・・。
「シャオとキリュウもだ」
「そんな・・・せめて離珠をつけて・・・」
「大丈夫。ルーアンの用意してくれた陽天心達をつれていくから」
「いや−ん、たー様ったらあたしのこと信用してくれてるのねぇ」
ルーアン復活。しかし拒否されたシャオは寂しそうだ。
と、そこへキリュウが話しかけてきた。
「主殿、さっき実行とか言ってたな。いったい何をする気なのだ?
それにシャオどのに作らせたあの奇妙な液体は何だ?」
キリュウの言葉はどこか怪しんでいるようだった。
「えっと・・・それは・・・」(まずい、ここで感づかれては・・・そうだ)
太助はキリュウの目を見て真剣にいった。
「大丈夫だ。安心しろ。必ず明日の朝には帰ってくるから」
「え・・・でも・・・」
キリュウは照れていた。
ことごとく主に嫌われてきたキリュウのこと、あまりこうやって話されたことはないのだろう。
「・・・それとも俺が信じられないのか?」
「い、いや、そんなことは・・・」
キリュウは引き下がるしかなかった。
「あたしはたー様のこと信じるわ!」
「私もです。太助様」
「ありがとう、シャオ、ルーアン」
結局何をしに行くのかは語らずじまいだった。太助は心の中で安堵のため息をついていた。
(危ないところだった。今ここで気づかれては計画が台無しだからな)

「よし、こんなもんかな」
太助は出かける準備をしていた。手にはシャオの作った謎の液体のはいったバケツ。
足もとにはルーアンの用意した陽天心達が出発の時を待ちわびている。
「あんた達、たー様の言うことちゃーんと聞くのよ」
「それじゃ行って来るから」
「うむ。気をつけてな、主殿」
「なるべく早く帰ってきてくださいね、太助様」
そう答えるシャオの顔は少し不安そうだった。

その日の夜。
「えーっ!七梨先輩いないんですかぁ!」
「あんまり大きな声だすなよ、花織ちゃん」
七梨家には花織、たかし、乎一郎、翔子、出雲といつもの面々がそろっていた。
宿題をいっしょにやりに来たと言っているが、それは口実で
シャオ、太助(約一名ルーアン)に会いに来たのである。
ところがそのうちの一人、太助がいないことでさわぐ花織にシャオが説明していた。
「今日の夕方出かけられたんです。明日の朝には帰って来るって言ってました」
この言葉を聞いて三人の男が色めき立った。
(太助君がいない!?これはシャオさんとお近づきになるチャンス!)
(よっしゃー!今日こそシャオちゃんのハートをこの熱き魂でゲットだぜ!)
(も、もしかして今日はルーアン先生と一緒に・・・)
それぞれの思いを胸にいざ行動開始!と、その時
「シャオはついていかなかったのか?七梨が心配じゃないのかよ」
翔子が先にシャオに話しかけた。
「心配ですけど、ついて来るなと言われまして・・・それにルーアンさんの陽天心が一緒ですし・・・」
「あの七梨が・・・陽天心に頼ったのか!?」
太助がそんなことするなんて考えられない。>ちょっとどういう意味よ(怒)byルーアン
「どこへ行くとか、何をしに行くとかは?」
「知りません。太助様が大丈夫だって言うから信じてるんですが・・・」
「おいおい。普通怪しむだろ・・・」
そう言いながらも翔子は、シャオは本当に太助を信頼してるんだなぁと感じていた。
しかし今回はいつもと違う。
(あの材料といい、謎の行動といい・・・シャオにさえ何も知らせてないなんて・・・)
翔子は何らかの不安を感じていた。と、その時
(シャオしゃま〜)
離珠がシャオ達のいる部屋へと入ってきた。
「どうしたの?離珠」
(さっき太助しゃまの部屋でこんなもの見つけたでし)
それは一枚の紙切れだった。紙には何やら円形の模様が描かれている。
「これは、魔法陣みたいですね」
出雲が離珠のもってきた紙切れに説明をつける。
(他にも似たようなのがいっぱいあったでし。なんかの試し書きのようだったでし)
これを見て翔子の不安はますます大きくなった。
「やっぱり今日の七梨おかしいぞ!おいシャオ!今から七梨のとこに行くぞ!」
「え・・・でも太助様について来るなと言われてますし・・・」
「七梨のことが心配なんだろ!?なにか起こってからじゃ遅いんだよ!」
「第一どこにいるのかわかりません・・・」
「あっ・・そうか・・・」
困った翔子に助け船を出した乎一郎だった。
「ルーアン先生のコンパクト使えば・・・・」
「そうか!その手があったか!頼むぜ、ルーアン先生!」
「ふっ・・・あたしの出番ってわけね」
さっそくコンパクトを開き、その画面を全員がくいいるように見つめる。しかし・・・・・。
ザ――――――――・・・・・・・・・・
コンパクトの画面には砂嵐が流れるだけだった。
「はやく見せてくれよ」
「ちがうわよ!うつらないのよ。おかしいわねぇ・・・」
ルーアンがいくら力を込めてもコンパクトには何もうつらない。その代わり何かに気づいた。
「・・・なんか妨害電波のようなものがでてるわね。それも特殊な魔力のようなものが・・・」
それはおかしい。人間である太助に魔力があるわけがない。
「シャオ・・・これでもまだ行かないって言うつもりか?」
「太助様・・・」
シャオだって本当は太助と一緒にいたい。ましてやこれだけ不審な点がでてくると心配でたまらない。
今すぐにでも太助のもとへ行きたい。しかし居場所がわからない。と、そこへ
「おそらく、主殿はあそこにいる」
キリュウが突然口を開いた。すると、全員が一斉にキリュウの方を注目した。
その光景にキリュウは少し照れながらも話を続けた。
「私が主殿に頼まれて用意した場所だ」
そこはとある山の中にある平原。立ち並ぶ木は万象大乱で小さくしたので広い空き地が出来ている、
とのことだ。その場所を聞き出したシャオとルーアンは、
「ありがとうございます、キリュウさん。太助様には申し訳ないけど、私太助様の所に行って来ます!
来々軒轅!」
「あっ、待ちなさいよシャオリン!たー様はあたしのもんよ!陽天心召来!」
二人はそれぞれ軒轅、陽天心をかけられた絨毯に乗って夜の空へと飛んでいった。
「ちょっと、あたしらはどうすんだよ・・・・そうだ!キリュウ、あんた短天扇で空飛べたよな。
それにあたし達も乗せてくれ!」
「ああ、わかった」
キリュウは短天扇を全員が乗れるくらいの大きさにすると真っ先に乗り込んだ。
「さぁ、乗ってくれ」
「ようし、行くぞ!」
「シャオさん、私もお供しますよ!」
「シャオちゃぁぁぁん!今行くぞぉ!」
「七梨先輩、待っててくださいね!」
「ルーアン先生、僕も行きまーす」
(離珠もいくでしー)
全員が巨大化した短天扇に乗り込んだ。
「出発!」
そして一行は太助がいると思われる山へと向かって行った。夜の空には明るい満月が浮かびあがっていた。

あたりには民家がほとんどない。まさに山奥といったところだ。夜ということもあってかなり不気味だ。
そんなところに一行はやってきた。
「せ、先輩ぃ。なんかおばけとか出そうですねぇ」
「な、何言ってんだよ。花織ちゃん」
そう言いながら、たかしの足はふるえている。
「こんな所に太助君が本当にいるんですかね」
出雲の疑問はもっともだった。こんな薄気味悪い所に太助が一人でいるのか。
第一まだここに太助がいると決まったわけではない。
「おに−さん。そんなこと言うなよ」
「え?あっ・・・」
シャオが不安そうな顔をしている。誰よりも太助のことを心配してるのはシャオなのだ。
「すいません。無神経なこと言ってしまって・・・」
一行はキリュウの用意した空き地へと向かって森の中を歩いていた。
「ルーアンさん、何か感じますか」
「ええ・・・邪悪な魔力が流れてるわ。このせいでコンパクトにうつらなかったのね」
「魔力を察知できるなんてさすがルーアン先生」
それを聞いたシャオはますます不安になった。それをシャオの肩に乗っている離珠が励ます。
(シャオしゃま、大丈夫でし。きっと太助しゃまは無事でしよ)
「ありがとう、離珠・・・」
「みんな、静かにしてくれ。そろそろ私の用意した空き地に着く」
あまり音をたてないように一行は注意して進み、やがて問題の空き地が視界に入ってきた。
そこには一人の人影があった。後ろ姿で顔がはっきりわからないが、その後ろ髪にはシャオがあげたリボンが!
「太助様!」
シャオは思わずそう叫んで飛び出していってしまつた。
人影・・・もとい太助はいきなりの後ろからの声に驚き、そっちの方を振り返った。
「シャオ!?来るなと言ったはずだろ!」
「ごめんなさい、太助様。でもどうしても心配で・・・」
その後ぞろぞろと残りのメンバー達も空き地へと入ってきた。
「お前らまで・・・どうしてここに・・・」
「その前にお前の後ろにあるもの、ありゃなんだ。説明してくれよ」
「う・・・」
翔子に尋ねられ太助は困った表情を見せた。
太助の後ろ、つまり空き地の中央には巨大な魔法陣が描かれていた。
「あれはお前の部屋にあった紙切れに描いてあったのと同じ模様だな。それに・・・その格好なんだよ」
「うう・・・」
太助の服装は出かける時に着ていたものとは違っていた。
なんて言うか、ファンタジーのマンガやアニメに出てくる、悪の王子のような格好をしている。
コスプレとも言っていい。背中のマントがお約束(笑)。
「今日のお前絶対おかしいぞ。シャオ達は誤魔化せてもあたしはそうはいかない。
ここでいったい何をしてるのか、はっきりと答えろ!」
翔子は声を大にして言った。そしてその気持ちはここにいる全員が感じていることだった。
「・・・もはや隠し通す事は無理のようだな」
そしてゆっくりと太助は口を開いた。
「俺は七梨太助などではない・・・」

「ど、どういうことですか!」
シャオは混乱している。
「この男の体に乗り移っているのさ」
太助の姿をしたそれはそう答えた。
「落ち着け、シャオ!お前七梨じゃないんなら何者だ。七梨に乗り移ってるとはどういうことだ!」
パニック寸前のシャオに代わり、翔子が話を進めた。
「俺の名はダークマター。この本に封印されていた悪魔さ」
太助に乗り移っているダークマターはそう答えた。その右手には<伝説の魔道書>が。
「あーっ!あの本!昨日七梨先輩が図書館で借りてた本だ!」
「この男が本を開いてくれたおかげで自由になったのさ」
「七梨の奴、なんて事をするんだ・・・」
その時ようやく落ち着いたシャオがダークマターにむかって叫んだ。
「返して下さい!太助様を返して下さい!」
「そうよ!さっさとたー様の体から出ていきなさいよ!」
「七梨先輩の体を乗っ取るなんてサイテーです!」
ルーアン、花織も負けじと叫ぶ。太助に戻ってきてほしいのは二人も同じなのだ。
「返してやるさ。ただし、儀式が終わってからだがな」
「儀式?どういうことだ。その魔法陣や私達に用意させた物と関係あるのか?」
キリュウがダークマターに問いつめた。
「もう隠しても意味ないからな。全部話してやる。俺の目的はこの世のすべてを破壊することだ。
しかし本体の俺は魂のような状態で、そのままでは何もできん。誰かの体に乗り移らなければならんのだ。
しかも誰でもいいというわけにはいかず、強い体でなければ俺の実力が発揮できんのだ。
しかしこの世界には世界を滅ぼせるほどの強い人間などいないからな。
だから今俺の力が100パーセント出せる最強の体を作っているのだ。
それがあの魔法陣だ!」
そういえば魔法陣はうっすらと輝いている。恐らくダークマターの体が作られているのだろう。
「体を作ってるの!?だったらなんでたー様に乗り移ってんのよ!」
「わかってないな。俺は誰かに乗り移らんと何もできん。儀式だってできんのだ。
だから体が完成するまでの間に合わせの体が必要だったのだ」
「たー様が間に合わせですって!?」
「それにな、儀式を行うにもいろいろと準備がいるんだ。まず魔法陣を描けるほどの広い場所。
大きさも重要だからな。しかし人目のつくところでやるわけにいかん。だからここをキリュウに用意させた。
それと魔法陣を描くための特殊な塗料。これは材料が多く、作り方もややこしい。
おまけに少しでも成分が違うと正しく効果を発揮しない。だから失敗するわけにいかない。
そこでこういう細かい仕事はしっかりしてそうなシャオに任せたのだ。
思ったとおり、きちんと作ってくれたよ」
「そんな・・・」
シャオは愕然とした。太助のためにと思ってがんばったのに・・・。
「あたしの陽天心はどうしたのよ。一緒に連れてったはずなのに、どこにもいないじゃない」
「儀式に必要なものはまだある。それは生け贄だ。そいつらの命が新しい体の血や肉となるんだ」
「まさか、陽天心を生け贄にしたの!?」
「本当は人間を使うんだがな、あれで代用させてもらったよ。
さすが精霊の与えた命。実に質のいい命だったよ」
あまりのことにルーアンは今にもキレそうだった。
「そして、満月の夜であること。この時間は魔力が高まり儀式を行うにもちょうどいい。
これだけの条件を揃えるのは困難なのだが、お前らのおかげでうまくいった。
そういう意味ではこの男に乗り移ったのはラッキーだったな」
「ふざけんじゃないわよ!」
ついにルーアンの我慢も限界だ。
「あんたねぇ!たー様に乗り移ってあたし達騙すなんて、ただじゃすまないわよ!」
「ほう・・・どうするつもりだ?」
「あんたの計画なんかぶっ潰してやるわ!」
その言葉でシャオもキリュウも他のメンバーも立ち上がった。
「私も手助けします!太助様を取り返しましょう!」
「加勢するぞ、ルーアン殿!」
「七梨先輩のためにがんばるです!」

「よっしゃあ!まずは俺に任せろ!」
そう叫んだたかしの手にはサッカーボールが。
「たかし君、どこからサッカーボールを」
「花織ちゃんのおもちゃ袋から借りた」
「ほんとは七梨先輩と遊ぶはずだったんですぅ」
たかしはサッカーボールを足元に置いた。
「いくぜ!俺の熱き魂を乗せたボールよ!とんでいけ!」
そう言うとたかしはボールを蹴った。ボールはダークマターの顔面に向かって飛んでいく、が、
「ふんっ!」
ダークマターは念力のようなものでボールをはじき返し、ボールはそのまま、
「ぐわっ!」
たかしの顔面に直撃した。
「野村先輩!」
勢いで後ろに倒れ込んだたかしを見て花織が叫んだ。
「なんてことするんですか!このー!」
飛んできたボールをダークマターに向かって投げつける。が、
「ふんっ!」
やはり同じように返され花織もダメージを受ける。
「いったーいっ!」
「馬鹿な奴らだ。こんな体では俺の実力の十分の一もだせんが、それでもお前らを軽くあしらうぐらいの力は
残ってるんだぞ」
勝ち誇ったようにダークマターは言った。
「相手は手強いな。こっちも考えないと」
翔子がみんなに問いかける。
「そうだ!おにーさん、あんた神主だろ!あんな悪魔やっつけてくれよ!」
「な、なにを言ってるんですか!うちは縁結びの神社ですよ!悪魔ばらいなんて出来ませんよ!」
「シャオにかっこいいところ見せてみろよ!」
「シャオさん、私に任せて下さい!」
わかりやすい奴。しかしそんな簡単に引き受けていいのか?
「行きますよ!悪霊たいさぁぁぁぁん!」
出雲がダークマターに向かって走り出す。
「馬鹿め・・・」
ダークマターは手からエネルギー弾のようなものを出し、それを出雲にぶつけた。
「ぐわぁぁぁぁ!」
出雲は全身がしびれるような感覚を覚え、その場に倒れ伏した。
「出雲さん!」
「やっぱりちょっと無理があったかな」
シャオは心配そうだが翔子は失敗したかなという表情だ。なんとか起きあがった出雲が戻ってきた。
「・・・これは人間の力じゃかないませんね」
出雲は少しふらふらしながら言った。
「翔子さん、みなさんを連れて後ろに下がっていてください。私達がなんとかします!」
「・・・わかった。気をつけろよ、シャオ」
そう言うと人間メンバーは空き地から少し離れて森の中に入った。
「三人の精霊が相手か。少しは楽しめそうだな」
「ルーアンさん、キリュウさん、気をつけて下さい。相手はかなりの強敵です」
「わかってるわよ、んなこと」
「心してかからねばな」
キリュウはそう言うと拾った小石をダークマターに投げつけ、そして、
「万象大乱」
小石は巨大な岩石となってダークマターを襲う。が、
「はぁっ!」
なんと飛んできた岩石をパンチ一発で粉々にしてしまった。
「くっ・・・」
キリュウは悔しそうに声をあげる。
「やるわね。じゃあこれはどう?陽天心召来!」
粉々に飛び散った破片一つ一つに命が吹き込まれ、ダークマターを攻撃する。
「ぬおっ!?」
少し油断していたのかダークマターは驚きの声をあげた。しかし、
「はぁっ!」
全身から衝撃波のようなものを発し、ダークマターの体にくっついていた陽天心小石達はみな吹っ飛ばされた。
「はぅぅ・・・小さすぎたのね」
「ならば大きくすればいい。万象大乱」
さっき吹っ飛んだ陽天心小石達は岩石へと巨大化し、再びダークマターに襲いかかった。
「おぉっ!陽天心と万象大乱の合わせ技!これなら!」
草むらから見ていた翔子は期待の声をあげた。
「少しはやるようだな」
ダークマターはニヤリと笑ったかと思うと、今度は両手からエネルギー弾を連発し、
陽天心岩石達を皆破壊してしまった。
「そんな・・・」
草むらから見ていた人間メンバーはがっくりと肩を落とす。
とはいえ、今の攻撃で少し疲れたのか、ダークマターの息が荒い。
「はぁ・・はぁ・・どうした、そんなもん・・・かぁっ!?」
ダークマターがいきなり地面に倒れ伏した。うつ伏せに倒れたその背中には星神・折威が。
「これであなたの動きは封じました」
いつの間にかシャオが呼び出していたらしい。
「おのれ、こんなもん・・・はぁぁぁぁぁぁぁ!」
ダークマターが気合いを入れると、体がゆっくりと起きあがってきた。
背中にいる折威は信じられないといった表情だ。
「はぁっ!」
ダークマターが完全に起きあがると折威は地面に振り落とされた。
「折威ではだめですか。それなら・・・来々瓠瓜!」
呼び出された瓠瓜はダークマターを吸い込もうと口を開けた。激しい強風がダークマターを襲う。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ダークマターは吸い込まれまいと強風に逆らい必死に足をふんばる。
「おのれ、これでどうだ!」
ダークマターはエネルギー弾を放ち、それを瓠瓜に吸い込ませた。
ボカンッ!
「グエッ!?」
エネルギー弾は瓠瓜の口の中で爆発し、瓠瓜はその場にばたんと倒れてしまった。気を失ってるだけのようだが
口のまわりが黒く焦げている。
「あの野郎!瓠瓜になんてことを!」
瓠瓜派の翔子としてはダークマターの今の行動は許し難いものがあるだろう。
「そんな・・・瓠瓜でも駄目だなんて・・・」
「ちょっとシャオリン!あんたなんで攻撃用の星神出さないのよ!車騎とか天陰とかいろいろあるでしょ!」
「太助様を傷つけるなんて私には出来ません。まず相手を太助様の中から追い出さないと・・・」
それを聞いてルーアンもキリュウもハッと気づいた。確かにダークマターは強いが、今の強さなら
三精霊達が束になってかかればなんとか勝てなくもない。しかし下手に攻撃すると太助まで傷つけてしまう
ということを。
「ようやく気づいたようだな。お前らが俺を倒すなど不可能だということを」
ダークマターはこうなることが始めからわかっていたのだ。
「くっ・・・たー様の体を盾にするなんて・・・」
「卑怯者め・・・」
ルーアンとキリュウは腹を立てていた。それはダークマターに対してだけでなく、何も為す術がない自分に
対してそう感じていた。もちろんシャオも同じだ。主の体に悪魔が取り憑くなど経験したことがない。
太助を助けようとするが何も出来ず、せめて動きを封じようとしたがそれすら駄目だった。
三精霊達は自らの無力を感じ、それを悔しく思っていた。
「そろそろ終わりにしてやろう・・・」
ダークマターはエネルギー弾を放ち、三精霊達を攻撃した。
「きゃぁぁぁぁ!」
「いたーっ!」
「うわぁぁぁ!」
エネルギー弾の直撃をくらった三精霊達はその場に倒れ込んでしまった。
「シャオ!」
「ルーアン先生!」
その光景を見ていた翔子と乎一郎は思わず飛び出していった。
「お前、よくもシャオを!」
「ルーアン先生になんてことするんだ!」
「ふん、うるさいのがまだいたのか」
ドカァァァァン!
「「うわぁぁぁぁぁ!」」
やはり二人もエネルギー弾をくらってその場に倒れた。
「すみません、翔子さん・・・私のせいで・・・」
「シャオは悪くない・・・ただシャオが傷つくのは嫌なんだ・・・」
「遠藤君・・・あなた、そこまで・・・」
「ルーアン先生の役に立ちたくて・・・すみません、何も出来ませんでした・・・」
シャオとルーアンは自らのために飛び出し、傷ついてしまった者達に対して申し訳なく感じていた。
もっと自分がしっかりしてればこんなことには・・・・。と、その時
「何か様子がおかしいぞ」
キリュウがそう話しかけてきた。魔法陣の輝きが急に激しくなったのだ。
「おお・・・ついに俺の体が完成したぞ!」
ダークマターはくるりとシャオ達の方を振り返った。
「タイムリミットだ。俺はこれから新しい体に移る。それで俺は最強となるのだ」
ただでさえ手強いダークマターがこれ以上強くなったらもうシャオ達三精霊でも歯が立たない。
「そんな・・・」
「もうどうしようもねえのかよ!」
「そんなの嫌ですぅ!」
草むらで一部始終を聞いていた出雲、たかし、花織はあまりのことに動揺していた。
「もう、この体は用無しだ」
そう言うと太助の体から黒い塊が飛び出して、魔法陣に吸い込まれていった。
「今のがダークマターの本体・・・」
「たぶんあの魔法陣から出てくるのね・・・」
キリュウとルーアンが今の出来事に説明をつける。意識を失った太助の体はその場にばたりと倒れ込んだ。
「太助様!」
シャオは急いで太助の元へと駆け寄った。
「太助様!しっかりして下さい!太助様!」
シャオがいくら呼びかけても太助は目を覚まさない。とはいえ、息も脈もあることから、死んではいない。
気を失っているだけのようだ。魔法陣の輝きはますます激しくなっていく。
「やばいぞ!みんな離れろ!」
「あっ、待って下さい!太助様を運ばなければ!」
ルーアン達は翔子の一言で出雲達のいる草むらへと入っていった。
シャオも太助の体を軒轅に乗せ、急いで避難してきた。
「い、いよいよダークマターが現れんのかな・・・」
たかしの声は不安でふるえている。魔法陣の輝きは最高潮に達した。
「来るぞ!」
キリュウがそう叫んだ時、魔法陣から激しい光が放たれた。
「うわっ!」
あまりのまぶしさに目がくらんで辺りが見えなくなった。

「大丈夫ですか、みなさん?」
「ああ、だいぶ目も見えるようになってきた。シャオこそ大丈夫か?」
「はい」
光がおさまり、ようやく落ち着いてきた頃、出雲が口を開いた。
「ダークマターは・・・どうなったんですか?」
まだ気を失っている太助を除く全員が、草むらから顔を出し、魔法陣の方に目をやった。
あの輝きはすっかり消えている。そして魔法陣の中央にダークマターが立っていたのだが・・・・
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」
ダークマターの叫び声が聞こえてきた。それもそのはず。出来上がった体は、見た目が非常に悪く、
まるで子供のラクガキである。はっきり言って変である。
「・・・・なんだあれ?」
翔子そう言うのも、無理はなかった。きっと全員が同じことを思ってるだろう。かっこ悪い、と。
「こんなのが、最強の体・・・?いや、見た目で判断してはいかんな」
ダークマターは手のひらをシャオ達のいる草むらに向けた。
「また、あれを撃つ気だ!」
翔子がそう叫び、全員がもう駄目か、と思った瞬間、

ぽふっ

「・・・・・あれ?」
ダークマターの間の抜けた声が飛び出した。手から小さな光が出ただけで、しかもすぐ消えてしまったのだ。
「おかしいぞ、さっきより力が出ない・・・」
こんなはずではないのにと、ダークマターは動揺している。
「そんな馬鹿な。魔法陣はちゃんと描いたはず・・・」
足元に描かれている魔法陣に目をやるとそこには、
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
またもダークマターの叫び声が聞こえてきた。それもそのはず。
魔法陣の上には数多くのラクガキが描かれていたのだ。

「どうなっているんだ?」
キリュウの問いに答えられる者はいない。メンバー達は皆何がなんだかわからなくなっている。と、そこへ
(シャオしゃま〜)
離珠がシャオの元へと駆け寄ってきた。
「離珠!?いったい今までどこに・・・」
(離珠あのまほーじんの上にいっぱいラクガキしてたでし)
「らくがき?」
「シャオ、離珠はなんて言ってるんだ?」
離珠の声はシャオ以外に聞こえないので、シャオが離珠のメッセージを伝えた。すると、
「そうか!それでわかりましたよ!」
突然出雲が何かをひらめいたように叫んだ。
「え?どういうことですか、出雲さん?」
「魔法陣というものは、少しでも模様が違うと効果が狂ってしまうんです。
恐らく離珠さんが魔法陣にらくがきを加えたことにより、効果が変わってしまったんです!」
「つまりあいつの体は失敗作だってことか?」
たかしが問いかける。
「そうです。あいつはシャオさん達との戦いに夢中でしたからね。
離珠さんの行動に気づかなかったんでしょう」
「確かに離珠ちゃん小さいから気づきにくいし、実際俺達も気づかなかったもんな・・・
てことは何?離珠ちゃんのらくがきが俺達を救ったのか!?」
「私達どころか世界救っちゃいましたよ・・・・」
(なんだかよくわからないけど、えっへんでし)
しばし呆然とする面々。そして事態を把握したルーアンがダークマターに向かって叫んだ。
「ほーっほっほっほっ!かかったわね、ダークマター!あたし達があんたの注意を引きつけてる間に魔法陣をめちゃめちゃにする。そういう作戦だったのよ!」
「すごいや、ルーアン先生!」
「乎一郎・・・そんなのウソに決まってんだろ・・・」
すかさずたかしのつっこみが入る。しかしそれを聞いたダークマターは
「なにぃぃぃぃぃぃぃ!すべてお前らの作戦だったのか!?」
「信じてるぞ、おい・・・・」
翔子はあきれたように声を出す。
「ともかく、形勢逆転ってことですよね・・・」
花織の一言で翔子が立ち上がった。
「よぅし!みんな、反撃開始だ!」

「うぉぉぉぉぉぉ!俺の熱き魂のパンチ、受けてみろ!」
「よくもルーアン先生を傷つけたな!」
「シャオさんを傷つけた罪、許しませんよ!」
「七梨先輩に乗り移ってたなんて許せないです!」
「シャオと瓠瓜をひどい目にあわせたな!」
ダークマターはたかし、乎一郎、出雲、花織、翔子ら人間メンバーに袋叩きにされていた。
「いてっ!いててててててて!」
明らかに太助に乗り移ってた時より弱くなっている。今のダークマターにたかし達を追い払う力などない。
「みんな、離れて!陽天心を使うわよ!」
ルーアンは周りに落ちている小石に陽天心をかけた。
「うわぁぁぁぁ!いたたたたたた!」
ダークマターは陽天心小石達にボコボコにされていた。吹き飛ばそうにも衝撃波が出ない。
さっきまでの強大な力は完全に失われていた。
「こ、こんなはずでは・・・俺の計画があんならくがきで台無しになってしまうなんて・・・」
そうこうしてるうちにも、ダークマターのそのへっぽこな体にはどんどん傷が増えていく。
「このままではやられる・・・こうなったら!」
突然ダークマターは空へと高く飛び上がった。
「あっ!あの野郎、逃げる気だ!」
たかしがそう叫んだ。
「逃がしはしない」
キリュウはそう言うと短天扇を広げた。

森の上空をダークマターは飛んでいた。
「最強の悪魔たるこの俺がなんたる失態だ!ここはひとまず逃げてどこかに身を隠そう!
そして必ず計画を再開してみせ・・・るぅぅぅぅ!?」
バコォォォォォォン!
ダークマターは目の前に突然現れた大木にぶつかってしまった。
無論、キリュウが万象大乱で大きくしたものだ。
「森の木よ。その者を捕らえよ!」
キリュウが呪文を唱えると、木の枝が伸びてきて、ダークマターの手足にからみついてきた。
「し、しまったぁ!」
ダークマターは木に縛り付けられた状態で動けなくなってしまった。
「さぁ、シャオ殿。とどめをさしてくれ!」
「はい!」
シャオはそう返事すると、支天輪を掲げた。
「太助様を操り、私達を騙し、皆さんを傷つけて・・・・あなたは絶対許しません!来々北斗七星!」
呼び出された北斗七星は狙い違わず、ダークマターに向かって飛んでいく。
ダークマターは太助の記憶をのぞいた時にそれが何かを知った。最強の攻撃用星神であることを。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ドカァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

北斗七星の攻撃は見事にダークマターにヒットした。
「・・・そんな・・・ばかな・・・・この・・・・俺・・・・・が・・・・・・」
そう言い終わるか言い終わらないかのうちに、ダークマターの体はチリと化し、静かに消えていった・・・・。

「う、うーん・・・・・ここは?」
太助は自分の置かれている状況が理解できないでいた。
なんで森の中で寝ているんだろう。それにこの変な格好は・・・・・
「太助様!」
その時目の前に、よく見知った顔の少女が走ってきた。
「・・・シャオ?」
「よかった!元に戻られたんですね!」
「は・・・?」
元に戻るとはどういうことだろう。太助にはさっぱりわからない。と、そこへ
「おっ!七梨、目ぇ覚めたか」
翔子だ。そしてそれに続いてよく見知った面々が集まってくる。
「たー様大丈夫ぅ?」
「あっ!七梨せんぱーい!」
「目が覚めたか、主殿」
「やれやれ。やっと目を覚ましたんですか」
「おーっす!太助!」
「太助君!」
(太助しゃま〜)
何?なんでみんなここにいるの?何がどうなってるの?えーと、落ち着けよ。太助。
確か・・・みんなで図書館に行って・・・愛原に連れてかれて・・・
変な本見つけて・・・それを開いてみたら・・・・・
「そうだ!あの本!あの本からなんか黒い塊が出てきて・・・」
「そいつはもうやっつけたよ」
「へ・・・?」
翔子の答えにますます混乱する太助。
「どうやら何も覚えていないようだな・・・。しかたない。あたしが全部話してやるよ」
翔子は事の一部始終をすべて太助に話した。

「みんなごめん!俺のせいで迷惑かけちまったみたいで・・・」
「太助様は悪くありません。悪いのはみんなダークマターじゃないですか」
「でも・・・俺があの本を開いたりしなければこんな事には・・・・」
「いえ、謝らなければいけないのは私です。私がもっとしっかりしてれば乗り移られることもなかったのに・・
・。私守護月天失格です・・・」
「そんな・・・シャオはちゃんと俺のこと守ってくれたよ。だから今こうしてここにいるんじゃないか・・・」
「太助様・・・」
「主殿、話はその辺にして手伝ってくれ」
キリュウはスコップを差し出した。
「手伝うって・・・何を?」
「後片づけだ。魔法陣を掘り返して、みんなで埋めていたのだ。これも試練だ。手伝われよ」
そういえばみんなスコップを持っている。
「そうか・・・わかった手伝うよ」
太助はキリュウからスコップを受け取った。その時翔子が話しかけてきた。
「ところで七梨・・・似合わないな、その格好」
太助は未だに悪の王子コスプレのままだった。ダークマターが乗り移ってた時はそれなりに雰囲気が出ていたが
、いざ元の太助に戻ると実に似合わない。
「言わないでくれ、山野辺。俺も恥ずかしいんだ・・・・」
「主殿、試練だ。耐えられよ」

「ようし、こんなもんだろ。」
太助が声をあげた。魔法陣は完全に消えてなくなっていた。
「あとは、この本を処分するだけだな。残しておくといつまたこんなことになるか・・・」
太助は魔道書に火をつけた。火はまたたく間に燃え広がり、やがて燃え尽きた。
「・・・これですべて終わったな」
太助はほっと一息ついた。東の空がうっすらと明るくなってきた。
「もうすぐ夜が明けるな」
「そうですね。我々夜通し戦ってたんですか・・・」
翔子の一言に出雲が言葉を返す。
「そういえばあたし眠くなってきたです・・・」
「俺も・・・」
「僕も・・・」
花織とたかしと乎一郎はそろってあくびをした。
「たー様ぁ。もう帰りましょうよ」
「主殿、私も眠い・・・」
ルーアンとキリュウが太助に話しかける。
「そうだな・・・帰るか!」
「はい!」
(帰るでしー)
太助とシャオ(と、その肩に乗っている離珠)はそう言うと、お互いににっこりと微笑んだ。

そして、また朝が来る・・・・。

END


あとがき

まず、ラブラブな話が好きな方、ごめんなさい。
それから、ダークマターなんてダサイ名前で、ごめんなさい。
しかしこれは私が一生懸命になって書き上げた作品です。
原案はキリュウが登場する前からあったのですが、今回こうして形にする時がくるとは思いませんでした。
まだまだ至らない部分はあると思いますが、こんな話で喜んでもらえれば、幸いです。
感想とかいただけたらうれしいです。きっといい思い出になります。一生懸命頑張るっていいですね。


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注意:この小説はシャオりんぐのほかに月天召来!(作者:天ノ月紘姫さん)とReliance EVOLUTION(作者:剣聖炎羅さん)にも同じ物が掲載されています。